近未来の日本。 東京は二十一世紀初頭に起きた相次ぐ地震のせいで砂漠と化し、周縁には無国籍のスラムが広がっていた。 その砂漠の中心にあるのが東京少年刑務所、通称東京プリズン。 少年犯罪の増加に頭を痛めた政府が半世紀前に設立した、入ったら二度と出られないと言われる悪名高い刑務所。 それぞれの理由を抱えて劣悪な刑務所に送りこまれた少年たちの群像劇第二弾。
サークル名: | ロールシャッハテストB |
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販売日: | 2022年11月30日 |
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シリーズ名: | 少年プリズン |
カップリング: | 寡黙尽くし攻めサムライ×親殺しのクール毒舌天才少年 / 美形俺様尽くし攻め王様×強気意地っ張り受け囚人 / |
作者: | まさみ |
イラスト: | あるびの |
年齢指定: | R18 / |
作品形式: | ノベル / |
ファイル形式: | PDF / |
その他: | ボーイズラブ / |
ジャンル: | メガネ / バイオレンス / 歳の差 / しつけ / 命令/無理矢理 / |
ファイル容量: |
DLsite価格:275円DLsiteで購入する
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近未来の日本。
東京は二十一世紀初頭に起きた相次ぐ地震のせいで砂漠と化し、周縁には無国籍のスラムが広がっていた。
その砂漠の中心にあるのが東京少年刑務所、通称東京プリズン。
少年犯罪の増加に頭を痛めた政府が半世紀前に設立した、入ったら二度と出られないと言われる悪名高い刑務所。
それぞれの理由を抱えて劣悪な刑務所に送りこまれた少年たちの群像劇。
(SF/バイオレンス/アクション/BL18禁)
(カプ傾向 寡黙包容攻め×クール強気受け 美形俺様攻め×強気意地っ張り受け)
暴力描写・流血表現あり。鍵屋崎直
IQ180を誇る天才少年。両親を視察し東京プリズン送致が決定した。途方もなくプライドが高い毒舌家で周囲と摩擦を起こす。サムライと同房。受け。
サムライ
直と同房の囚人。仙台の武家一族の長男だが、当主の父を惨殺し収監される。寡黙で朴訥な男。攻め。
ロン
台湾人と中国人の混血。娼婦の母に虐待されて育った。レイジの同房。喧嘩っ早く生意気な性分で囚人や看守に目を付けられやすい。受け。
レイジ
極東の砂漠に存在する少年刑務所、通称「東京プリズン」の東棟のリーダー。東の王様の異名をとる。フィリピン人とアメリカ人のハーフで絶世の美形。攻め。
リョウ
池袋で売春組織を率いていた男娼。ジャンキーなマザコン。気に食わない直を陥れようと暗躍する。
サーシャ
北の皇帝の異名をとるロシア出身の囚人。凄腕のナイフ使いでレイジのライバル。冷酷非情な性格。雑種のレイジに執着し性奴隷にすべく狙っている。
安田順
東京少年刑務所副所長の謹厳実直なエリート。直と関係があるらしい。斉藤とは大学の同期生で元友人。調子っ外れの鼻歌が聞こえてきた。
「大漁大漁っと」
踊り場の窓を乗り越えて歩いてきたレイジに所在なげに展望台に散っていた囚人たちから嫉妬と羨望の入り混じった視線が注がれる。両腕いっぱいに抱えているのは手紙の束だ。
「ロン、こんなとこにいたのか。さがしちまったじゃねーか」
「大漁だな」
にやけ面のレイジにイヤミっぽく言ってやる。両手に抱えた手紙の山を見下ろしたレイジはまんざらでもなさそうに笑う。
「これでも昔に比べて倍近く減ったんだぜ」
レイジの手の中に目をやる。手紙は全部で二十通、この倍近く届いていたということは四十通か?展望台のコンクリートに胡座をかき、どさりと手紙を投げ落として一通ずつ目を通してゆく。
「スヨン、杏奈、シェリファ、メアリー、麗羅、ソーニャ、テレサ……」
長ったらしい呪文のようにブツブツと女の名前を唱えながら右から左へと手紙を移し変えて小山を築いてゆくレイジは一瞥もせず、つまらなそうな無表情で本に読み耽る鍵屋崎。興味ないふりを装っているが、苛立たしげにページをめくる手つきから奴が酷くぴりぴりしていることがわかった。最後の一通を頂点にのせる。手紙の小山を築き終えたレイジは「よっしゃ」と腕まくりし、嬉嬉として開封作業にとりかかる。手紙の山の中腹からランダムにとりだした封筒を日に翳して差出人名を確かめ、いそいそと封を破く。
「くさい」
おもわず鼻をつまむ。レイジが広げた便箋からすえた香辛料の刺激臭のようななんともいえない匂いが漂ってきた。
「ばか、香だよ。インドの」
どうやら便箋に香が焚き染められていたらしい。顔の前に漂ってきた異臭を手で払いながら好奇心にかられてレイジの手元を覗きこむ。膝這いに這ってレイジへと近寄った俺の目にとびこんできたのは便箋上のミミズの行進。
「……何語だ?」
毒を呷ったミミズが七転八倒してるようにしか見えない外国語は俺にはさっぱり理解できない。便箋の文面に目を走らせながらレイジが言う。
「ヒンドゥー語」
……男でも女でもとっかえひっかえ手当たり構わずの節操なしだとは知っていたが、人種はおろか国にもこだわらないなんて。レイジはある意味究極の平等主義者かもしれない、レイジの中にはそもそも国境線が存在しないのだ。次から次へと手当たり次第に便箋を広げてはとっかえひっかえ目を通してゆくレイジのにやけ面が無性に腹立たしくなって舌打ちしながら鍵屋崎の隣に戻る。ガサガサと手紙を広げる音が背後で聞こえる。レイジがうらやましいわけじゃない、そんなことはない絶対に。最初から期待してなかったから落ちこむ理由もない。だいたいこんな極東の刑務所宛に、俺宛の手紙が舞いこむわけがないのだ。
お袋とはとうに縁を切った。親でもなけりゃ子でもない。だから別に―……
「落ち込んでんのか」
背後で声。
「落ち込んでねえよ」
膝這いに這って俺の顔を覗きこんだレイジが一瞬逡巡するような表情を見せてから、俺の顔の前に一通の手紙を突き出す。
「やるよ」
「……は?」
馬鹿かコイツ。
「お前宛の手紙くれても嬉しくねーんだけど」
「たくさんきたからお裾分けだ」
真性の馬鹿だコイツ。
それとも天然で残酷か天然でお人よしなのだろうか、寛容で博愛精神あふれる偉大な王様の発言に俺は口を噤んで一寸迷うそぶりを見せてからおずおずと手紙を受け取る。そして、満足そうに微笑したレイジと手紙とを見比べて早速行動にでる。封筒から薄い便箋をとりだしてコンクリートの地面に広げ、丁寧にしごいて折り目をのばす。何のつもりだと怪訝な顔のレイジをよそに便箋をさっさと折りたたんで紙飛行機を作る。
俺は天性の不器用だから出来はお世辞にも素晴らしいとはいえないが、まあいいだろう。
完成した飛行機を角度を変えてためつすがめつしてから、ひょいと手首を撓らせる。俺が飛ばした紙飛行機は上手いこと風に乗り、ツバメのようにあざやかに滑空した。
「なんてことすんだよ!?」
俺の奇行をあぜんと見守っていたレイジがこれ以上なく情けない顔で訴えるが、無視して飛行機の行方を追う。小手をかざした俺の視線の先、不恰好な紙飛行機はよれよれと不安定な軌道を描いて遂に力尽き中庭に墜落。バスケットボールを追って駈けずり回っていたガキどもに踏まれ、揉みくちゃにされ、泥だらけになる。
「飛距離30メートルというところだな」
本から顔を上げた鍵屋崎が一言呟き、すぐにまた本に目を戻す。意外と飛んだな。上々な成果に気をよくした俺の隣ではレイジがコンクリートに手をついて大袈裟に嘆いていた。
「ひどい、ひどすぎる、親切を仇で返しやがって……娑婆の愛人のシェリファが真心こめた手紙なのにっ」
恋人じゃなくて愛人ときたか。レイジらしい。
「一枚くらいケチケチすんな、沢山余ってるだろうが」
俺を哀れんで分けてくれるくらいだからもとから執着は薄かったのだろう。案の定レイジの立ち直りは早かった。ため息をついて胡座をかいたレイジは手紙の山を両手に抱え直すと今初めて気付いたように鍵屋崎に目をやる。
「キーストアには手紙きたの?」
「来たのならこんなところにいない」
にべもない返答だ。
眼鏡越しの目を伏せて即答した鍵屋崎を「ふ~ん」と眺め、両腕に手紙を抱えたレイジが何か言いかけたときだ。
「やっほ、みんな集まってるね」
澄んだボーイソプラノに揃って振り向く。
今しも窓枠を越えて展望台に降り立ったのは燃えるような赤毛のガキ。鼻梁にそばかすが散った童顔にあどけない笑みを湛え、俺らの方に気安く手を振ったのは男娼のリョウ。にこにこ笑いながらスキップするように近づいてきたリョウの後ろ、窓枠を跨いで姿を見せたのはリョウと同房の黒人だ。名前は忘れたが、レイジと仲がいいからツラは知ってる。
人懐こく笑いながら俺の隣に腰掛けたリョウが手にしていたのは一通の手紙。よっぽど大事な人から届いた手紙らしく、もう一通、無造作に尻ポケットに突っ込まれてる手紙とは扱いからして違う。尻ポケットの手紙のほうが白い上質紙の封筒で高級感あふれてるのに。
「ようビバリー、その節は世話んなったな」
「いえいえ。またテキーラが必要になったらいつでも言ってくださいっす、王様と仲良くしといて損はないっすからね」
ビバリーと呼ばれたガキと和気藹々と会話してるレイジ、その言葉の何かがひっかかる。
「飲みたくなったら、じゃなくて必要になったら?」
囚人が酒を隠してるのはいまさら不思議に思わない。要領のいい囚人の中には看守に取り入って酒や煙草やガムなんかの禁制品をゲットする奴もいるし、博打が強い囚人の中には看守と賭けをして戦利品をぶんどるのを生き甲斐にしてる奴もいる。ビバリーは愛想もいいし世辞も上手いし看守受けは悪くなさそうだ。テキーラを手に入れる機会はいくらでもあったわけだ。
だからその点に関しては疑問は抱かなかったが妙な言い回しが気になった俺に、レイジが意味ありげに微笑する。
「また火炎瓶が必要になったら、な」
すとん腑に落ちた。
「ガキの頃よく火炎瓶作って遊んだなー。テキーラを瓶にいれて火をつけて投げる遊び」
「レイジさんどんな子供時代すごしたんすか」
火炎瓶にテキーラを流しこむ動作をしながら昔なつかしむレイジにあきれ顔のビバリーが一同を代表してツッコミをいれる。俺もチームにいた頃は火炎瓶のひとつやふたつ自前で用意したが、ガキの頃からそんな物騒なもんを持ち歩いたりはしなかった。
「で?お前は手紙もらえたのか」
回想から覚めたレイジにビバリーが腕を広げる。手ぶらの証明。
「仕方ないっすよ。ほら、僕のファミリーってビバリ―ヒルズ在住じゃないスか。届くまで時差があるんスよ、エアメールだし」
残念そうに主張したビバリーから俺の隣に腰掛けたリョウへと視線を転じるレイジ。
「お前は?」
「じゃーん」
待ってましたといわんばかりに顔の横に手紙を掲げる。得意満面、胸を反らしたリョウの右手に鍵屋崎を除く全員の視線が集中する。
「ママからだよ」
ママ。
舌の上で砂糖菓子がとけるような発音。
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