「たまゆらの蝶」の後日譚、冨○義勇の物語。
サークル名: | 螺旋の月 |
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販売日: | 2020年12月27日 |
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シリーズ名: | 暁月夜譚 |
カップリング: | 義勇×しのぶ / |
作者: | 飛牙マサラ |
イラスト: | 石神たまき |
年齢指定: | |
作品形式: | ノベル / |
ファイル形式: | JPEG / PDF同梱 / |
その他: | 乙女向け / |
ジャンル: | シリアス / 純愛 / |
ファイル容量: |
DLsite価格:440円DLsiteで購入する
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作品概要(引用元:DLsite.com)
蝶屋敷に冨○義勇が足を運んだその日、仏壇に静かに花を手向け、合掌する彼の姿があった。
「有り難うございます」
「……いや」
栗○落カナヲの方へ向き直り、義勇は切り出した。
「……栗○落に頼みがある」
「頼み、ですか」
「胡蝶の鍔と一緒に置いて貰えないだろうか」
スッとカナヲの方へと己の鍔を置く。
あの決戦の際に義勇の刀は折れてしまったが、決戦後に無限城跡から隠たちが彼の刀を探し出して渡してくれたのだ。刀は当然使い物にはならず、義勇は鍔だけを残して一先ず手元に置くことにした。
そして鬼がいぬ今、これがもう刀の一部となることはないだろうが、これをせめて彼女の傍に置いて欲しいと願い、懐に忍ばせて此処まで持ってきたのである。
彼の様子を目を細めて眺め、少女は静かに義勇の方へと鍔を戻しながら言った。
「……ここにし○ぶ姉さんの鍔を置くよりは水柱様が持っていて下さった方が姉さんも喜ぶと思います」
そうして仏壇からし○ぶの鍔を取り、自然な動作で義勇の鍔と重ね置いた。
「……俺は然程、長生きは出来ない。後、俺はもう水柱ではないから冨○で構わない」
痣が出ている者は二十五歳以降は生きながらえないと知っている。しかも無惨戦にて相当の傷を負っている事を考えてもそれは妥当だと考えていた。
それなのに妹から姉の形見を貰うわけにはいかない。
「それでも……それでも姉さんはあなたに持っていて欲しいと思います」
そう言って真っ直ぐ見つめてくる瞳は血の繋がりはなくとも確かにし○ぶの妹なのだと義勇は感じた。
それにしてもカナヲの様子からして彼と姉の関係を知っている風にも感じる。
だがら何故俺に、と言う問いは飲み込んだ。そんなことは些末事だ。
そう、そんなことより以前には見せたことない感情を打つけてくる、こんな少女を見たら胡蝶はきっと喜んだに違いないと義勇は感じた。
お前の妹は昔のお前のように感情が豊かになっているぞと心の中で思う。
「……承知した」
だから静かにそう答えた。それが彼女の願いだというのなら叶えたい。
「一度、仏壇に供えさせて戴いても?」
「……構わん」
カナヲは義勇から彼の鍔と姉の鍔を受け取り、二つを合わせるようにして仏壇に供えた。
そして静かに黙祷をし、暫くすると義勇の方へと向き直る。
「み……冨○さん、どうぞお受け取りを」
カナヲが彼をそう呼ぶと一気にし○ぶとのことが思い出された。
―冨○さん、そういうところですよ!―
その呼び方が懐かしい。
今もなお鮮やかに思い出せるのに不思議なものだ。
お前は本当にいないんだな……この栗○落カナヲと蝶屋敷の子供たちを残して逝ってしまった。
そう思うと鈍い痛みとなって義勇の胸を切り付ける。
刀ではなくお前自身が何故残らなかったのか。
何故共に戦えなかったのか。
幾ら考えても答えなど決まっているというのに。
それでもあの夜は二人だけもの。
それだけは確かなことだった。
カナヲから受け取った、掌にある二つの鍔はまるで最初からそうであるかのように自然にしっくりと重なっていた。
「……有り難く受け取る」
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