鈍感平凡男子を溺愛するスパダリ幼馴染の日常シリーズ。甘甘ほのぼの大学生カップルのじれったい恋模様。
サークル名: | ロールシャッハテストB |
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販売日: | 2022年11月28日 |
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カップリング: | 美形王子様モデルなクォーター大学生×平凡ヘタレ強気意地っ張り大学生 / |
作者: | まさみ |
イラスト: | まる |
年齢指定: | R18 / |
作品形式: | ノベル / |
ファイル形式: | PDF / |
その他: | ボーイズラブ / |
ジャンル: | 幼なじみ / 学生 / 芸能人/アイドル/モデル / 女装 / ラブラブ/あまあま / 日常/生活 / ほのぼの / 焦らし / |
ファイル容量: |
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作品概要(引用元:DLsite.com)
容姿端麗頭脳明晰、パーフェクトな幼馴染のフジマにコンプレックスを抱く平凡な大学生・巧。
気になる女の子に玉砕した合コンの帰り道、酔っ払った勢いでフジマに絡んだのがきっかけでモテるレッスンを受けることになるのだが……。
モデルをしている王子様な大学生×非モテ平凡男子な幼馴染
大学生幼馴染の甘々日常シリーズ。
甘々/ほのぼの/女装/コメディ/一部無理矢理
◆目次◆
「ダイヤと屑石」
「はりぼてつれづれ」
「ダイヤとポッキー」
「ダイヤとヤドリギ」
「ダイヤとバブル」
「ダイヤと遊園地」
「ダイヤと観覧車」
「ダイヤとケーキ」
「ダイヤとハロウィン」
「ダイヤとメイド」
「ダイヤとブランコ」
「ダイヤとツリー」
「ダイヤと燃え殻」酒は呑んでも呑まれるなというが俺はもっと厄介なもんに溺れた。
「なあ、俺に足りないものってなんだと思う?」
酒は入っていた。それは確かだ。魔が差したのだ。
「どうしたんだいきなり」
友人のあきれ声。
居酒屋の座敷で行われたサークル主催恒例の飲み会、俺の隣には小学校から腐れ縁の幼馴染が胡坐をかいてビールをお代わりしていた。
「だからさー、不足分だよ不足分。これでも頑張ってんだよそう見えねえかもしんねーけどさ。へこむんだよね地味に。髪だって雑誌見ながら研究してようやく納得いく角度と柔らかさに仕上げたんだよ、鏡とにらめっこして整髪料使って……髪質に合う整髪料さがすのも大変だった、俺の髪コシがねえから相性よくねえとすぐしんなり垂れてきちゃうんだよ。最近流行りの無造作ヘアー?それ狙ったの、演出。くどくなく、あざとくなく、なおかつイケてる路線をね」
「ふむ。研究熱心な事で」
「だろ?俺って実は真面目くんなの、ひとつのことに打ち込むとそれしか見えなくなるっつうか」
「知ってるよ、何年つきあってると思ってる。ガキの頃から見てるんだから」
「服だってさー、気を遣ってるんだよ。ウニクロ?あ、ちがうユニクロね、ウニは寿司のネタか。いかに安くおシャレに見せるかって上下の組み合わせ考えて裾出して、カジュアルでいながら崩れすぎず、こうね、ナチュラルオサレを狙ってるわけなのよ」
「努力の痕跡は認める」
「ありがとう」
頭のてっぺんからつまさきまで流し見て判定を下す偉そうな幼馴染に、ついつられ頭を下げる。
この時点でだいぶ酔っ払っていた。
呂律は怪しくもたつきアルコールを過剰摂取した目はとろんと濁り、すっかり骨抜きになった体はくらげのようにぐにゃぐにゃして右に左に不安定に揺らめく。
どよんど負のオーラ炸裂でくだ巻く俺を出来すぎた幼馴染は生温かく見守る。
微笑ましさと仕方なさを六対四で割ったような眼差しで、理不尽な言いがかりをつけられても決して怒らず寛容に徹し鷹揚に応じる様がなおさら憎たらしく、自分の顔を指さし懇々と訴える。
「俺が言いたいのはさ、問題はさ、なんでこんなに頑張ってるのに致命的絶望的壊滅的にモテねーのかって一点に尽きる。おかしくね?晴天のヘキレキじゃね?どう思うフジマ―」
藤馬は苦笑しつつ大人しく俺に肩を貸す。
実にご立派あっぱれ模範的態度、相手がぐでんぐでんな酔っ払いだろうが冷たく突き放したりしないんですこいつは。なんたって出来たヤツだから。モテモテですから。見てくださいこの包容力、大人の魅力全開の微笑み。全知にして全能の釈迦の如く慈愛を体現するアルカイックスマイル。
完璧。
降参。
はいはいもう認めます、高橋巧はなにひとっつ安西藤馬にかないません。
顔も頭も性格もこいつのほうがはるかに上、比較すんのもおこがましいってなもんです。
「フジマー、お前が女おとした最短記録って何秒だっけ……」
酒が入ると絡み癖がでる。そう自覚しつつヤケ酒かっくらったのは理由があって、その日俺は片想いの相手に告白して案の定振られたのだ。
玉砕。
地獄の底から湧きあがるような鬱々とした呪詛に文句も言わず延々つきあってくれる藤馬によどんだ三白眼で因縁ふっかけりゃ、よくできた友人は内心の辟易などおくびにもださず(辟易してるだろうさすがに)ぐずる赤ん坊をあやすような調子で俺に言う。
「覚えてない」
「二秒」
断言できる。
自信をもって断言しますとも、なぜなら俺は人が恋に落ちる瞬間を見てしまったのだから。
正確には俺の惚れてた女友達が出来心で引き合わせた藤馬に一目ぼれする瞬間であってんなもん見たくなかったんだよちきしょーと絶叫したところで後の祭り、時よ止まれお前は美しいと偉大なる先人は言いましたが俺の場合時よ戻れ俺が失恋する前にと土下座したい気分だ。
「そうだっけ?」
わずかに眉根を寄せて記憶の襞をなぞるも、つきつめて考えるのを放棄し、にっこり華やかに笑う。心当たり多すぎてひとつに絞れないって可能性もありか。
泡立つビールを一気に干し空のジョッキを卓に叩きつける。朗らかに笑う藤馬の鼻先に人さし指をつきつけ、気炎を上げて吠え猛る。
「同じ学部の崎谷さん紹介した時!いやな予感はしてたんだ、でも崎谷さんがどうしてもっていうからしぶしぶ連れてったんだ、そうしたら案の定……的中だよ」
藤馬はキャンパスでもひどく目立つ。
片想いしてる女の子は数知れず、積極的にモーションかけてくる子も多いという。
ガキの頃はどちらかというと線が細く色白の女顔だったのに、高校に上がる頃から背がのびてしなやかな筋肉がついて、あっというまに王子系の男前に成長した。
中学の時分から街を出歩くたび雑誌モデルにスカウトされる藤馬は服の着崩し方も垢抜けて、俺なんか引き立て役にしかならない。
こいつは引き立て役が欲しくて俺と行動してるのだろうか。
「食堂で待ち合わせして、俺が声かけてお前が振り向いた時、コトッと音がした」
「音?」
「人が恋に落ちる音」
「はは、巧は面白いこと言うなあ」
「笑い事じゃねえよ。したんだよ、マジで」
実際、音はしたのだ。ただそれは崎谷さんの手が動いて、携帯にぶらさげてたぬいぐるみのストラップがぶつかった音だったけど。
「俺の失恋瞬間風速も塗り替えられた……」
どうあがいたってかなわないやつがいる。
携帯にぶつかったストラップを見た時、戦わずして敗北を悟った。
ざわつく食堂の中央で、椅子に掛けた藤馬が振り返って優雅に手を挙げた瞬間、崎谷さんの恋愛ベクトルは固定されてしまったのだ。
たったそれだけの事と人は笑うだろうか。
俺の思い過ごしだと、頑張れと、無責任にけしかけるだろうか。
だけどこれが初めてじゃないんだ。
俺が好きになった女の子を藤馬がかっさらうのは小学校低学年からずっと繰り返されてきたセオリーで、不幸な経験が鍛え上げた勘が働き、俺の好きな子が藤馬を恋愛対象として意識し始めたらすぐわかるのだ。
そして案の定、大学に入っても同じ悲劇が繰り返された。
いつになったら呪縛が断ち切れるんだろう、藤馬に対するコンプレックスを拭い去れるんだろう。
たちが悪い事に藤馬本人に俺の好きな子をとったという自覚はない。自覚がないから罪悪感も発生しない。どの場合も全て女の方から勝手に惚れる。だから藤馬を責めるのは間違ってる、と頭ではわかる。
藤馬は人気者だ。何をやらせてもパーフェクト。文武両道才色兼備、その上家は金持ちな王子様だ。
俺のお袋の口癖は「あんたも藤馬くんを見習いなさい」で、歴代担任の口癖も以下同文。あれ?才色兼備って女に使う四字熟語だっけ?……どっちでもいいや、酒が入ってるんだ、誤用は見逃してくれ。
小中高と一緒の腐れ縁で大学まで一緒、何の因果かサークルまで一緒ときた。藤馬ならもう一ランク上の大学も狙えたのにと疑問を抱けば、「俺は巧と一緒がいい」と例の輝かんばかりの笑顔で返された。
俺も健全な男子だ。隣家の美少女が毎朝窓伝いに起こしにきてくれるお約束のシチュエーションを妄想しなかったといえば嘘になるが、残念ながら幼馴染の性別は野郎だ。この年までつきまとわれても鬱陶しいだけ。
ガキの頃から一緒だった幼馴染が足かせになり始めたのはいつからだろう。
サークルの飲み会。日常に組み込まれた馬鹿騒ぎ。座敷を占領した学生どもは底なしに飲んで騒いでどの顔も無邪気に楽しげで、べそべそ愚痴ってるのは俺だけだ。ビールを舐める。苦いだけだ。
「フジマ―……俺に足んねえもんってなんだよ……」「口、開けろ」
促されても頑として応じず、高速で首を振る。
俺の顎を掴み、むりやり顔を上げさせためつすがめつじれたように言う。
「巧、開けて。続けられない」
「…………」
無言で首を振る。俺は既に涙目だ。あんな濃厚なキス女の子とだってしたことねえのに反則だ、初めてのキスの相手が男で幼馴染とかしょっぱすぎる。
酸欠とショックとで潤んだ上目で、精一杯の怒りと反感を込めて藤馬を睨みつける。
手の焼ける俺を微笑ましげに眺め、藤馬が優しく呟く。
「北風と太陽の話、知ってる?」
「?」
口元を結んだまま頷く。
北風と太陽がどちらが先に旅人の外套を脱がせるか競争する童話で、北風が強く吹きつけるほどに旅人はますますきつく襟をかきあわせる。しかし太陽が顔を出しあたりを照らせば、汗ばむ陽気につられ自ら外套を脱ぐというオチがつく。
「……には……太陽のがいいかな」
巧には太陽のほうがいいかなと、聞こえた気がした。
「―!んっ、ふ」
再び唇が被さる。
親指で俺の顎を持ち、上向きに固定し、ゆっくり味わうように唇を重ねる。
さっきの性急で強引なキスとは違い、あくまで紳士的にリードしながら未知なる領域の感度を開発し高めていく。
粘膜同士が唾液を潤滑油にして触れ合う音が空気を攪拌する。
藤馬がキスの練習台を名乗り出たら面食い女が列を成すに決まっていて、藤馬相手なら金を払ってでもキスをしたいという女が尽きないというのに、どうしてこいつはよりにもよって俺を選ぶ?
男の、同性の、幼馴染の。
とりたてて魅力もない、平凡な俺なんかとキスしてるんだ?
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